稲藁の役割
先週、丹波篠山の農園にて、収穫を終えたコシヒカリ。
その新米をゆっくりと炊き上げ、口に含むと、しっかりとした甘みと上品な香りの「土地の味」に感動する。土地が米を実らせ、その土地に暮らす生産者の方々の惜しみない手間が、米を育てたことを素直に感じる。
その土地土地に米作りの文化があり、代々の先人の工夫が伝承された「味」なのだ。
コンバインで籾を収穫した後の稲藁は、この地でも重要な循環型農業の役割の一つを担っている。
集められた稲藁は、しばらくそのまま畑にて、乾燥した後、納屋で大事に来春の山の芋の発芽を待つ。
畝に敷かれた藁は、土壌保湿、雑草除けばかりではなく、害虫を捕食するカエルの住みかとしても役に立つ。
きりのやま農園の畔を歩くと、驚くほどの数の大小のカエルが、あちこちから飛び出して来る。
これは、カエルが暮らすに十分な自然の餌があることの証明でもあり、農薬にまみれていない安全な畑の証明でもある。
土壌保湿、雑草除けなら、黒いビニールシート(マルチシート)で畑が覆われている風景をよく見かけるが、作物に対してきめ細やかな観察眼を持つ生産者さんは、「土地や、葉や茎が焼ける。」と言う。藁敷きは、土地に対しても、生産物に対しても優しく働く工夫であり、山の芋の収穫が終われば、また分解されて畑の肥料となる。
昔ながらの生産文化として、稲藁の活用が伝承されていることは、食べ物の「安心、安全」を担保しているとも言える。
約一年における取材を通して、循環型農業の一面を知ることができたのは、私にとってありがたい気付きとなりました。
さらに「食べるもの」へ捧げる「感謝の気持ち」を深くしてくれたのは言うまでもありません。
炊きたての艶やかなコシヒカリが、一層甘く美味しく感じたのでした。